目 次
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41 〈シマ・ウッナー〉カイエ(3)
42 尖閣諸島の周辺は波高し?
43 東京都心の埋没した“沖島”地名
44 認識及び思考の対象の枠外に置かれがちの伊豆諸島という存在
―青ヶ島を侮ること勿れ!―
45 地震以後、感じたことなぞ…
46 人口ゼロの自治体で選挙はできるのか?
47 「島」認定の沖ノ鳥島の影の功労者
48 「東洋」と「東海」
49 ムラと村−原子力ムラというときのムラの響き−
50 ロレンス・ダレル(1912~1990)の多島海的な心象風景について-h.20n. 1gt.頃のノートから
47 「島」認定の沖ノ鳥島の影の功労者
2012.05.10
 
       「島」認定の沖ノ鳥島の影の功労者

 東京都小笠原村に属する沖ノ鳥島が先頃、国連の大陸棚限界委員会(CLCS:Commission on the Limits of the Continental Shelf)から事実上の「島」として認定された。
4月28日付『産経新聞』は、「200カイリを超えて海底資源の権益を主張できる大陸棚の拡大について、政府は27日、国連の大陸棚限界委員会が日本の国土面積の約8割に相当する計31万平キロの拡大を認める勧告を採択したと発表した」と報じた。
 沖ノ鳥島を基点とする大陸棚の延伸が認められたことで、わが国のEEZの範囲の中にあった空白の部分(四国海盆海域)と、それにつながる小笠原海台海域や南硫黄島海域がわが国のEEZとなった。
 『産経新聞』によれば、中韓両国はかねてより「沖ノ鳥島は岩であり大陸棚は設定できない」と主張。さらに、中国は平成21年8月、「沖ノ鳥島は人の居住または経済的生活を維持できない岩」と認定するようCLCSに働きかけていたという。すなわち、大陸棚の延伸が認められたことで、事実上「島」と認められたことになるわけだ。ちなみに、中韓両国の場合、他国と未解決の海面(島も岩もない単なる海)の上に居住区を有するプラットフォームを建設し、事実上の領土としている海域がある。
 もちろん、沖ノ鳥島は『産経新聞』が指摘するように、「満潮時に水面上に浮かぶ面積が4畳半程度しかない」のも事実である。まさに、「岩」なのである。だからこそ、その岩を島として保全し、島として実効支配することが必要なのである。
 本HPの2010年「ことのあとさきのこと」の中で、元・青ヶ島村職員の星野明宏さんが「小笠原の沖ノ鳥島の保全に関する〈陸地造成法〉」で特許を取得したことを紹介した。珊瑚が自然増殖して岩を取り囲み、島を大きくさせる、という画期的な方法である。そういう意味での「陸地造成法」なのだが、注目すべきは、この特許には「沖ノ鳥島の保全に関する」というコトバが冠せられているのだ。
 すなわち、国連のCLCSがそのことを知っていたかどうか未確認だが、日本国の政府機関である特許庁が「沖ノ鳥島の保全に関する」特許権を認めた、いいかえれば、沖ノ鳥島を岩でなく島として保全・実効支配していこう、という意思表示をしたことになる、という事実が大切なのだ。その特許を得た人物が青ヶ島関係者であることが、わたしには限りなく嬉しい。
 星野明宏さんの「発明」した方法で、珊瑚が自然増殖して、自然に形成された陸地部分がより増加して、どこからも文句がつかない島(一種の目安として、周囲が0.1km以上で、面積が1平方キロメートル)となることを、強く願う。国及び東京都、小笠原村は一体となって、沖ノ鳥島を島として実効支配していかなければならないと思う。ちなみに、興味ある方は「陸地造成法」という語を検索してみてください。
 なお、国際法では、島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、満潮時において水面上にあれば、その大きさに関係なく、島ということになっている。沖ノ鳥島にはそのような箇所が少なくとも2ヵ所はあるので、実際は国際法上も文句ない島ということになる。実は、島の「定義」まで、我国は友愛精神で満ち溢れているわけである。国連CLCSの勧告で沖ノ鳥島は事実上の「島」ではなく、実は、100%の島として認定されたと言っても過言ではない存在となったが、温暖化にともなう海面の上昇(ちなみに、沖ノ鳥島の周辺では、その影響はあまりない、と言われている)で、やはり危うい状態にあることは変わりない。その保全が珊瑚の自然増殖の「陸地造成法」であれば、より文句がないことになる。

※星野明宏氏の「陸地造成法」に関する記事は「ことのあとさきのこと」(2010年12月13日付)にも掲載しております。→リンク

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