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42 尖閣諸島の周囲は波高し?
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2010.07.14
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今回の参院選では、ひさびさに投票に行く気になれなかった。入れたい人や政党がなかったからである。そういうときには、今までに何度か狂歌や川柳を書いてきたこともある。そんな気力も起こらなかった。しかし、公示の前日までには、比例区だけだが「みんなの幸福実現たちあがれ日本創新党改革」と書いてやろう、という気になっていた。ところが、7月3日夜、「たちあがれ日本」の「足高慶宣」氏へ投票する気になった。
それというのも、『毎日新聞』のインターネット記事(3日20時42分配信)の、次のような記事を見たからである。
「たちあがれ日本は、参院選比例代表候補社会福祉法人理事長の足高慶宣氏(56)の除名処分を決めた。同党の園田博之幹事長は「尖閣諸島に上陸を試みようとしたので取りやめを勧告したが、3日夕、西表島に渡航した。売名行為であり、選挙期間中の法令軽視と受けた取られる行動は観護できない」との談話を発表した。」
ぼくは、この記事を見て、最初「たちあがれ日本」の“やらせ”ではないか、と勘繰った。というよりも、同党の主張から言えば、「たちあがれ日本」への関心と理解を喚起させるための“大芝居”ではないか、と思ったのである。内心、さすが平沼さん、やったな、と想ったのである。
おそらく、足高氏は、自分の候補者としての名誉を守るため、「地位保全」の確認申請と処分の取り消し申請を裁判所に請求してくるはずだ、と想った。そうすれば、少なくとも最高裁判所の最終決定が出るまでは、候補者ということになる。その間に、足高氏への支持が拡大するかも知れないし、「尖閣諸島」の問題がクローズアップされるので、選挙の“争点”としてもよい、と思ったのである。ところが、足高氏は自分の行動が党の政策に反しているとは考えていない、というような声明を出しただけで、このあと足高氏が提起した“問題”は一切報道されなかった。
ぼくは7月11日午後1時すぎ投票所へ出かけ、比例区選挙では「たちあがれ日本」の名簿の中にあった「あしたかよしのぶ」氏へ1票を投じた。おそらく、無効票である。なぜなら「名簿」には「あしたかよしのぶ」という名前のところに赤鉛筆で線が引かれていたからである。
しかし、ぼくには「たちあがれ日本」に入れるなら、この人に投票せよ、と指示しているように見えた。なぜなら、ぼくにとって、赤いアンダーラインは重要性を喚起させるための信号の役割を持っているからである。否、投票所へ来た人に対して、「あしたかよしのぶ」に注目せよ、と無言のうちに語っているように思えた。
もちろん、大田区選挙管理委員会の伝統では、この「朱線」は“削除”を意味している。なぜなら、過去に、こういうことがあったからである。
ぼくは昭和40年7月4日に行われた参議院選挙のとき初めて選挙権を行使した。ぼくは昭和20年2月生まれだが、当時の選挙法だと、選挙日の前に生れた人は選管へ出かけて選挙人名簿に登録しないと投票できないシステムになっていた。そこで、もちろん大田選管へ出向いて登録したのである。しかし、同い年のいわゆる早生まれの友人のほとんどは、この手続きを怠ったために、選挙ができなかったのである。ただし、たしか、その翌年だったか、「法」が改正されて、自動的に登載されることになった。
ところが、昭和42年1月29日の衆院選挙のとき、ぼくは「選挙権」を奪われた。公示の日になっても、ぼくのところだけ案内の葉書が届かないので、選管へ出かけて、選挙人名簿を見せてもらった。なんと、ぼくの名前の上には赤鉛筆で線が引かれていたのである。「これは何ですか」と訊ねると、「削除」だという。係りの話だと、これは「死亡」か「転出」で、要するに住所地での選挙権を失ったというのである。そんな馬鹿なことあるものか、ということで、その選挙人名簿を見せてもらった。
ぼくの名前は何枚目かの右ページの上から2番目にあったが、そこには赤線が引いてあった。実は、その丁綴りでは、右ページの2番目は、全部「赤線」で削除されていたのである。ぼくの記憶では、たしか、そのうちの一人は「死亡」と記されていたが、他のページは単なる「赤線」だった。当然、ぼくは抗議をした。
「他のページの削除された人は、死んだのか転出したのか? ぼくが死んでいるのなら、いつ、死んだのか。転出したのなら、どこへ転出したのか、教えてほしい。ひょっとすると、一ヵ所のミスを隠すため、右ページ側の2番目を全部、赤線で消してしまったのでないか?」
そう、ぼくが言うと、ちょっと偉そうな奴が駆け寄ってきて、「選挙人名簿の閲覧期間中に、確認に来ないからいけないのだ。これ以上、騒ぐと(まったく騒いでいない)警察を呼ぶ」ということで、やむなく退出した。そして、そのあと、大田区選挙管理委員会委員長宛に抗議文を内容証明付きで書き送ったが、もちろん返事は来なかった。
のち、ぼくは青ヶ島村役場で選挙のときは選挙事務や啓発の仕事もしたが、青ヶ島にいないときは、国政選挙では、そのこともあって「棄権」したことが多かった。
それはさておき、わが投票所に貼られてあった候補者名簿の「赤いアンダーライン」は、明かに「削除」を意味する朱線だったことがわかる。従って、おそらく、ぼくの1票は「無効票」ということになる。ただし、開票人がこの票を「たちあがれ日本」への投票と解して、開票作業のときや、票の点検作業のときも誰も異議を唱えなければ「有効」になる可能性はある。もし、そうなったとすれば、ぼくの本意ではない。「たちあがれ日本」への抗議の1票であるからだ。
「あしたかよしのぶ」票が全国で、どのくらい出たのか、ぼくは知らない。しかし、3日以降、あしたか氏が「地位保全」の確認申請などを行ったら、117,637票ぐらい取れていたかもしれない。周知のように、たちあがれ日本は比例区で得票率2.1%の1,232,207票を獲得して、土壇場で1名を当選させた。3年前の参院選のとき「ぶってぶって姫」の虎退治で敗退した片山虎之助氏が117,636票を獲得し、「たちあがれ日本」の第1位となって、滑り込んだわけである。もし、あしたか氏が削除されなかったとすると、同党の1位は無理だったかもしれないが杉村太蔵君よりも上位になったであろうと想われる。おそらく、あしたか氏のパフォーマンスが先輩諸氏の嫉妬の対象になったのかもしれない。政治家がこのくらいのパフォーマンスができなければ、政治家なんをやっていけない、と思われるのだが、おそらく、そこが嫉妬の対象になったのであろうか? ともあれ、あしたか氏の除名・名簿からの削除で、「たちあがれ日本」は同党への関心と、「尖閣」の問題を押し寄せる荒波の前に隠蔽させてしまったのである。
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