目 次
30
31 《八郎》子と源為朝
32 英語のislandの語源
33 〈シマ・ウッナー〉カイエ(1)
34 〈シマ・ウッナー〉カイエ(2)
35 還住(かんじゅう)と還住(げんじゅう)
36 息津嶋神・葛嶋神・坂代神という三島〈三宮〉構造
37 八丈嶋の「わきしま」鬼が嶋の〈五種+α〉神宝
38 都議補選(島嶼部)の開票結果と普天間の問題
39 村有地に建つ青ヶ島の神社
40 青ヶ島が奪われる?
41
38  都議補選(島嶼部)の開票結果と普天間の問題
2010.02.01
 
 1月24日(日)、伊豆大島の出身で元・都議会議長の川島忠一氏(62歳、都議7期目)の逝去にともなう、都議補選(島嶼部)が行なわれ、即日開票の結果、自民党の三宅正彦氏(大島)が各島から満遍なく票を集めて、民主党の池田ゴウキュウー氏にダブル・スコアー以上の“大差”をつけて圧勝した。
 周知のように、民主党は内部に大きな“爆弾”を抱えている。しかし、政権与党、都議会第一党という情況の中で、多くの人は、この結果には驚かれたかもしれない。いかに“島部”が自民党の牙城とはいうものの、もう少し民主党は健闘するかも知れない、と思われたことだろう。しかし、“勝つ気”がない政党に、誰が投票するだろうか?
 “勝つ気”がないと言ったら、おそらく民主党の支持者は、そんな馬鹿なことはない、と反論するだろう。たしかに、民主党は東京都選出の国会議員、そして都議会議員を大量に送り込んで選挙戦を戦う、という良い意味での前代未聞の、国政選挙でも見られない光景を現出させた。だから、“勝ちたい気”はあったのである。
 しかし、やはり“勝つ”気持はなかった、と言いたい。少なくとも1月2日の朝までは、そう思っていなかったと推測できる。否、もしかすると約1ヵ月間“楽勝”だと誤解していたのかもしれない。
 川島氏は昨年12月4日に亡くなり、7日には大島で葬儀が行なわれたが、自民党内では翌日から候補者の選定が始まったようだ。まず、町議時代からの、わたしの知り合いでもある大島町長の藤井氏が有力候補として浮上し、青ヶ島の菊池利光村長を推す声もあったらしい。しかし、クリスマスのころ、結局、川島氏の親類で、石原都知事の子息で前衆議院議員石原宏高氏の秘書をしていた三宅氏に決まったのである。
 ところで、産経新聞にすっぱ抜かれたが、1月8日、伊豆諸島・小笠原島の町村長の生の声を聞くという形で、民主党の小沢幹事長に呼び集められ、町村長は「踏み絵」を踏まされたらしい。これがなければ、もう少し差は開かなかったかもしれない。かくて三宅氏は民主党の松原仁衆議院議員の秘書・池田剛久氏を10,796対4,674で打ち破ったのである。
 おそらく、このままなら、平成25年の都議選でも、現・自民党系候補が現・民主党系の候補を破るだろうと推測される。そして、その論理的帰結は、民主党の“仕分け”体質と合理精神に発する“定数削減”の美名の“押し付け”になるであろう。勝ち目がないのなら、そんな選挙区など潰してしまえ、と考えるにちがいない。実際、かつて美濃部革新都政の末期のころ、都議会議員選挙の島嶼選挙区の港区への吸収が画策されたことがある。伊豆諸島航路の起点が竹芝であり、東京都島嶼町村会などが国鉄(当時)浜松町駅の東側にあるからである。今なら、さしずめ品川区か大田区への吸収を考えるにちがいない。
 ところで、都議補選と同じ日、沖縄県名護市の市長選挙では、民主党・共産党・社民党・国民新党推薦の候補が自民党・公明党の推薦候補に比較的僅差で勝利した。すなわち、一見、逆の結果となって現れたわけである。マスコミは“普天間移設”問題の名護市長選挙のほうばかり目を向けているが、実は、ここには“通底”している問題がある。
 それは沖縄も伊豆諸島も明治40年の「沖縄県及島嶼町村制」の対象地域であったことである。というよりも、明治22年の「市制」及び「町村制」の施行から除外された地域であるということである。そして、さらに、昭和21年1月29日のGHQのSCAPIN677号によって、日本政府より政治的行政的に分離された地域である、という共通点がある。
 政権与党も野党も、このことを強く認識していなければならならない。しかし、民主党はそのことを欠落させているのではないかと思われる。他国侵逼が危惧される中で、沖縄県及島嶼町村制→SCAPIN677の精神的文脈を、侵略しようとする側との「友愛」の視点で無意識的に利用しているのではないかと思われる。
 わたしの考えでは、島は日本の雛形(霊成型)である。日本全体で生ずることがいち早く島で現象するのである。平成19年の統一地方選挙では、西日本の島嶼部の県議選で、自民党公認候補があちこちで負けるという事態が生じたが、昨年の都議選・衆院選での民主党の勝利はその傾向を先取りしたものであった。島国日本は“島”を蔑ろにしてはいけないのである。
 普天間基地の移転先として議論されている地は、下地島(沖縄県宮古島市)・徳之島(鹿児島県奄美群島)・馬毛島(鹿児島県西之表市=種子島の属島)・硫黄島(東京都小笠原村)…等々である。もちろん、全て正真正銘の“離島”である。日本の行く末を見るとき、“島”を抜いて語ることはできないのである。


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