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     ひとりだけの祭り


神子ノ浦へ降りれば地球の鼓動が聴こえるし
東台所へ登れば宇宙の羽音も聞こえてくる
チョンテェーラ(長ノ平)に寝転べば宇宙の回転軸が映っているのを見ることができる
お祭りだ ひとりだけのお祭りだ

見上げると星いっぱいの空だった
遠くには八丈島の灯台が点滅している
約七十キロ離れた大坂トンネルを走る自動車のライトだって見える
よく晴れた日の夜の ひとりだけのお祭りだ

金毘羅様のイシバの中の〈風の三郎〉様のちっぽけな祠
夏草むんむんの匂いの中の
漂う線香の香りと光の点々
缶ビールを開けると またひとつ 赤い星が消えた

   
 2003.09.01
<自註>
 長ノ凸部(チョウノトンブ:ヘリポートのある長ノ平の少し北側の森の部分)の金毘羅神社のイシバには、「風の三郎様」と呼ばれている神様があります。風があまり吹かないように、そして船が来るように、祈ったようです。もちろん、その逆の場合を祈ることもあったでしょう。
 この「風の三郎様」が宮沢賢治の「風の又三郎」と、どのように関係しているのか(おそらく、直接の関係はないでしょう)、それは判りませんが、今から30年以上も前、その名前を廣江マツ(孝次郎さんのお母さん)、廣江のぶゑさん、奥山ち宇さん(三人とも故人)たちから聞いたときは、ちょっとビックリしました。
 サブローという音韻が放つ隠された意味合いの不可思議な響きが、「風の」という語に刺激されて膨らんでいきます。おそらく、サブという音韻は「荒(すさ)ぶ」という語を想起させるからなのでしょうか。