島酎の あの プーンとした匂い 芋焼酎の あの かすかな渋味 春は芋焼酎作りで始まる 蒸留中の あの甘い匂いが漂ってくる 陽だまりの風の当たらぬ場所はまるで春 汗さえにじむ しかし 風の吹きぬける場所はやはりまだ寒い ときどき霰交じりの雹がトタン屋根を叩いたとしても 暗夜の海にはトビヨ船の漁火が浮かぶ 青ヶ島の春は 虹と そして 青酎とトビヨ船でやってくる やがて島は春の気配を感じて武装を解くが しかし それでもわたしたちは頑なであらねばならぬこともある