>>一覧へ  >>HOMEへ
 
  昔の道が見えてくる


シジミチョウが二匹羽を休めたような
ガクアジサイの花も冬には懐かしい

冬枯れのガクアジサイのジャングルを
ポキンポキンと枝を折って進むと
いまはほとんど誰も通らなくなった
昔の道が見えてくる 浮かんでくる

ひっそり ちょっと恥ずかしがって顔をのぞかせる
枯枝のはずなのに
どっこい生きているヤツもいて
行く手をさえぎり
太いのはときどき鎌も撥ね返す

そして 何かを語りたがっている
ガクアジサイも 忘れられた道も

   
 2002.11.01
<自註> 
 11月下旬から2月下旬にかけて、ジャングル状態だった昔の道が、冬枯れの影響でほんの少しだけだが浮かび上がってくる。第1次在島時代、日曜日になると、わたしは昭和30年時代の暮らしの残像を捜し求めて、夏場は草木が邪魔をして歩けない山道を歩いた。
 第2次在島時代はそういう余裕がほとんど持てなかったが、ときどき《第1次》のことを想いだして出掛けることもあった。《彼方(おちかた)の繁木が本を 焼鎌の敏鎌以て打ち掃》いながら進んだものの、途中で道がもう判らない、ということもしばしばであった。そういうときの、あくる朝、役場の若手(当時)の玉嶋秀猛さんは、わたしのそばへ寄ってきて「きのう、“何処”へいきませんでしたか」と声を掛けてくれた。彼が歩いていくと、すでに、誰かが通った痕跡があり、いまどき、そういうことをするのは、「助役しかいない」と思ったそうである。もちろん、彼もあちこちを散策、否!探検していたのである。なお、《うた》のガクアジサイの花は、1月下旬に見たもの。