うた

菅田正昭のシマ論 でいらほん通信

チョンテェラのヘリポート

 

平成28年2月6日

 

 

ヘリポートの周りの

土くれの中の石をほじくりかえして

そこにクローバーの種子を

播いてくれ

そして芽が出てきたら踏み付けてくれ

昔のように

四つ葉のクローバーが生えてくるように

 

その先の墓地群の

墓の裏側に

こっそり明日葉の種子を

撒き散らしてくれ

牛メが食べてもよいように

そこに眠っている友がそう言っている

 

ヘリが飛んでくる

オスプレイだってその気になれば降りられる

見晴るかす海原には

白い航跡が動いている

チョンテェラには今もアカムシはあるか

牛が金毘羅様の鳥居の横で吼えている

 

(注)アカムシ…ダニの一種のツツガムシのこと。

 

 

 

 

シャンバウげぇ行こごん!

平成28年3月1日

 

想像と破壊の弁証法の構築物

過去と未来が織り成すコンクリートの固まり

荒波が呑み込み、そして、構造物が波に噛み付く

今は小型漁船が空を飛び

忘れられた斜面が昔の己をひっかする(忘却する)

シャンバウげぇ行こごん

 

目には視えないけれど

荒波を避けて急勾配の坂に引き上げられた艀が語り出す

艀を降ろすときロープが摩擦で煙を出す

艀が悲鳴をあげる

罵声が 怒声が 飛び交う

ヲンガシマの鬼ヶ衆の男達は命がけ

そごんどう光景が懐かしい あにもかも

シャンバウげぇ行こごん

 

 

 

 

鬼の子孫

 

平成28年4月1日

鬼の子孫が住むという島に

俺はやって来た

島に住み、島で採れたものを喰っているうちに

俺はすっかり本物の鬼になった

その証拠には、お前たちには視えないかもしれないが

頭のてっぺんから角が生えてきた

ユニコーンのような角だ

牛メがそれを見て脅えている

 

外部からやって来た俺が鬼になったというのに

鬼の子孫と称する島の連中は少しも鬼なんかじゃあない

鬼の本分を忘れている 抵抗精神を忘れている

人を喰わないで、人に喰われるばかりだ

心の中の鬼の宝物だって奪われてしまっている

だから誰も本気で鬼退治にやって来ない

だから反撃しようにも反撃できない

桃太郎が懐かしいが桃太郎もとっくに堕落している

鬼の形相になって俺は八郎子になって出撃しよう

 

 

 

 

大凸部(おおとんぶ)―四方八方が水平線

 

平成28年5月1日

大凸部の三等三角点の上に立ち

南を向けば太平洋

北を向いても太平洋

東西南北どこを向いても太平洋だ

ここは絶海の孤島青ヶ島である

そのちっぽけな島の最高点が我等の大凸部

そこに立てば四方八方水平線

時どき八丈島や八丈小島が視えることもあるが

おお 目くるめく 大海原の大洪水

海面が盛り上がり 私は海へ落下していく

島の天辺(てっぺん)にいるのに 遙かな水平線と

あくまでも私の眼は同じ高さなのだ

ここは孤島青ヶ島の最高峰

大凸部の三等三角点の上である

四方八方が天がける水平線なのだ

水平線の彼方には何がある

ひょこりひょうたん島じゃあないけれど

何かがきっと待っている

でも ここで ぢっとしていると

住んでいるところは どこもかしこも

みな等しく 地球の中心であることがわかってくる

大凸部はそんなことを気付かせてくれる場所だ

 

 

 

 

九字を切る

 

平成28年6月1日

わたし以外は誰もいないチョーヤの中で

目には視えないけれど白い靄が立ち込めている

漂っている 怪しい霊気だ 黒いのもある

わたしが放つ祝詞の言霊を消し潰そうと纏わり付く

大音声の言霊を発し イエーッ!

九字を切る 十字じゃあないぞ 九字だぞ

臨(リン) 兵(ピョウ) 闘(トウ) 者(シャ) 皆(カイ)

     陳(チン) 列(レツ) 在(ザイ) 前(ゼン)

妨害しようとする物の怪を切り払う

蝋燭の光が揺れるチョーヤの中で

わたしがそんな秘密の行をしていることを

島の人たちは誰も知らない

島中の嫌な空気をここで清めているのだ

家の灯りが木々の隙間から揺れ動いている

恐らくみんな睡りに就いているのだろう

もちろん まだ飲んでいる連中もいるかもしれないけれど

わたしが祈っていることを島の人は知らない

囲炉裏に掛けたヤカンのお湯でお茶を飲んで心を落ち着けて

わたしは何もなかったように

誰にも気づかれぬよう 見つからぬようにして家路に着く

 

 

 

青ヶ島沖で金が湧き出した!

 

平成28年7月1日

ぼくのオボシナサマはテンニハヤムシサマとカナヤマサマ

そのうちのカナヤマサマが囁いた、

青ヶ島だって黄金(こがね)が咲く島だよ。

たしか西浦に沈む夕陽が海を染めていた。

 

「高濃度の金鉱石を発見/伊豆諸島・青ヶ島沖/東大チーム」(h28・6.・3『産経新聞』第1面)。

桃色サンゴが手を振っているからと言って盗りに来ないでほしい。

金と珊瑚の宝の海、ちょっと深いのが玉に瑕

まぎれもなくここは青ヶ島の領海だ。

 

いったい全体、金が湧き出しているなんて。

そんな夢想をしたこともあったけれど。

そんな熱水鉱床があるなんて、

ましてや青ヶ島の近くで。

 

金山毘古と金山毘賣が囁いたのはもうずいぶん昔のことだ。

AOGASIMAからオーム(OM )を取ればアガシャになる。

聞き間違いか、言い間違えか、冗談か、

アガスティアの葉に金の産出の記録が。

 

カナヤマサマが守護をしている。

もちろんテンニハヤムシサマも千五六百の目を持って見張っている。

三嶋大明神も一品宝珠もテンドウサマもキムマモン大神もサンアイイソバも、

いざというときは駆けつけてくれるはずだ。

 

 

 

怒濤がどうと鳴る

 

平成28年8月1日

丹那婆(タナバ)母子の、

優婆夷(ウバイ)命と許志伎(コシキ)命(宝明神、古宝丸)の、

為朝と七郎三郎長女(シッチョウサボリノニョコ)の、

浅之助とおつな神の、

そして佐々木次郎大夫〔たち〕の、

子孫を遺した人たちとそうでなかった人たちの、

全てのDNAが天空で踊り出す

常世波になって青ヶ島へと打ち寄せる

 

ドッ ドッ ド ドン ドン

怒濤がどうと鳴って 波が太鼓を打って

渦巻きながらリズムをつくる

そして螺旋状の階段を登っていく

ピラミッドの天辺で打ち鳴らす

DNAの太鼓の音

怒濤がどうと鳴り 鉦がぐゎんと鳴って

八郎子(ハチロコ)や鬼たちが踊り出す

心臓の音もドコン ドキンとリズムをつくる

青ヶ島へと常世波になって打ち寄せる

無人島化を阻止するために祖霊たちがやって来る

 

 

 

東台所

 

平成28年9月1日

さらさらとした

汗ばむほどの

だが濃密な

それでいて希薄な時間が

あるときは急速に

しかし大抵はゆっくりと流れる

青ヶ島という空間の中の時間

その時空の小さな淀みにはまって動けない

 

東台所の玉石段は宇宙へと通じている

天・海・宇宙という三つのアマへ通じている

高天原と海中の龍宮を結ぶ階段だ

宇宙船の航路図からは忘れられているけれど

知っている人は知っている宇宙の灯台所だ

ときどき速星がティカティカ立ち寄る信号所だ

 

青ヶ島のチョウサマでは聖なる時間が流れている

誰もいない時には聖なる時間がゆったりと流れている

何しろ近づく人がいないのだから時間としても焦る必要はないのだ

だから空間も広がる必要もなくこじんまりと待機している

アヲゲーシマの天に坐しますハヤホシよーい

待っておじゃれヨーイ 待ちろ 待ちやれよーい!

ここで感じた私の時間は未来のものであり

かつ同時に過去のものである

時空の小さな淀みが希薄な空気の中で今動く

 

 

 

八郎子と蜂子皇子

 

平成28年10月1日

ハチロコ(八郎子)はハッタリをかます

ハチロコは鎮西八郎源為朝の子孫だ

ハチロコは伊豆大島に、利島に、新島に、式根島に、神津島に、三宅島に、御蔵島に、八丈島に、八丈小島に、青ヶ島に住む

当然のことウッナーに住む

ハッタラ―(八太郎)はハッタリをかます

八男は長男よりハッタリをかまさなければ生きてはいけない

ヤマトゥーとウッナーの間を毎日、往ったり来たりしてきた、と

あんまりハッタリをかますので

蜂に襲われていっぱい刺されて蜂子皇子になってしまった

かくて、蜂子皇子になって島々に住む

当然、必然、蜂子皇子はハチロコでもある

ハチロコはハッタリをかましながら八角形のセルに住む

ハチロコはハッタリをかましながら甘い蜜を吸う

ハチロコはハチノコだ ハチノコはハチロコだ

ハチロコは八角形のセルに住み、甘い蜜を吸いながらハッタリをかます

でも金蔵を建てるお金なんか自慢じゃあないけど持っていない

もちろん、ハチロはハッチョウ(八郎)であり

ハッチョウは八丈・八丁でもある

おお、八丁郭の表八丁・裏八丁のおとろし所に退却して

ハチロコたちよ ハッタリをかませ

 

 

 

青ヶ島の鍾馗様

 

平成28年11月1日

俺はあくまで正気だぞ

だから地団太を踏んで頑張っている

たとえ他者から正気と想われなくても

 

赤鬼も靑鬼も

わが化身の小鬼たちも俺を真似して

こけおどしかも知れないが地団太を踏んでいる

 

悔しいわけでも決して怒っているわけでもない

善人面して鬼を滅ぼそうとしたり

土地の霊力を滅ぼそうとしたり

土地の霊力を弱めさせようとしている奴らに

俺たちは堪え切れられないから

土地の霊力を復活させ高めるために

弧状列島全体の霊性を高めるために四股を踏む

ドッコイショ!

 

青ヶ島大里神社の鍾馗としての反閇(へんばい)だ

邪魔する奴らは踏み付けるぞ

生きおれ 生きろおれ めんな 我慢どうじゃあ

 

 

 

キダマ木は立つ

 

平成28年12月1日

キダマ(木魂)木 キダマ(木霊)木 キダマ(木玉)木よ

樹木の霊魂を身に付けたキダマ木よ

 

カミに選ばれたキダマ木や

人間に選ばれたキダマ木や

木々に選ばれたキダマ木や

自らそうならざるを得なくなったキダマ木もある

 

峠のトウゲサマになったキダマ木や

イシバの片隅に立つキダマ木や

木炭にする木々を伐採したあとに残されたキダマ木もある

 

誰にでもすぐわかるキダマ木も

ちょっと見にはどれがキダマ木だかわかりにくいのもある

森の神霊が宿るキダマ木や

樹木の神霊が宿るキダマ木もある

 

カミに選ばれ 人間に選ばれ 木々に選ばれたキダマ木

本当の意味での御神木は

注連縄が付いていなくてもキダマが着いている

ヤッホーと言ってヤッホーと応えなくても

キダマ木にはキダマが付いている

 

キダマを探せ キダマを見よ キダマの声を聞け

キダマ(木魂・木霊・木玉)木は大地を踏みしめ立っている

 

 

 

 

 

 

 

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